2013-01-01から1年間の記事一覧
震災の後、3月末から被災地に住み込んで取材した記者による日々の記録、2年分。 1年目の各章のタイトルは、 震災の春、選挙の夏、復興への秋、仮設住宅で越す冬。 2年目は、 巡り来た春、槌音ならぬ夏、希望色づく秋、我慢の冬。 記者の取材日記だから当…
(第3章 原発は安くない より) エネルギー調査会報告書や白書によると、原発のコストは1kw/h当たり5~6円で、LNG火力よりも再生可能エネルギーよりも安い。 しかしそれはモデル計算である。設備使用率80%、運転期間40年という想定は恣意的である。 そ…
リニア中央新幹線は2027年に東京―名古屋間で先行開業し、2045年には大阪まで全線開業。東京―名古屋間は40分、大阪までは67分で結ぶ。(ただし品川駅地下エレベータに10分) 建設費用は概算で名古屋まで5.43兆円、大阪まで9.3兆円。名古屋まではJR東海が自己…
(感想) 2004年にM9.1のスマトラ沖地震が起きた時、日本でM9の地震が起きたらどんな津波が来るかと思った素人は、私以外にも多かったと思う。 ところが、本書によると、多くの地震学者は、「M9地震を起こすには1000kmの断層が必要」と本気で考え、「万一日…
「日本都市史の構築」(序章部分)より 日本都市史は大きく平城京・平安京に代表される古代都城と江戸・大坂をはじめとする近世城下町という2つの類型で理解できる。 古代都城は中国大陸から伝来した都市類型であり、ほとんど模倣といってよい。平城京の前…
第1章 東日本大震災は多くの子供が学校にいる時間帯に発生、学校が災害の矢面に立つことになった。 津波が学校敷地内に到達した小中学校は3県で95校(ハザードマップではうち16校)。津波の危険察知や避難の成功は偶然によるところが大。住民の怒鳴り声…
たぶんトンチンカンな感想だとおもうけれど。 「農業を中心とした均質な日本社会像に疑問を呈してきた」のが網野史観らしい。 私としては直感的にはあまり同感しないなあ。
東日本大震災における仮設住宅建設に関わった行政現場の記録であると同時に、仮設住宅に関する制度と運用の実態、様々なバリエーション、トラブルと対処方法、間取りから住み心地までよくわかる本。 これまで私は、自分なりに合理的に考えたつもりで ・壊滅…
本書304ページより(1999年、台湾の地震の後に訪台し、アドバイスを求められた時の話。) 「相当思い切った金額の一時金を用意して、その現金を目の前に積んで、これを取るかそれとも仮設住宅や安上がりの公営住宅をつくるか、どちらがいいですかと被災者に…
災害復興学会会員ではないけれど、先週末に関西大学で開かれた2013大阪大会を、13日だけ聞きに行った。 わりと活気がある会合で、私にとっては会議も論文集も有益だったが、ここでは物足らなく思ったことだけ書くこととします。 1.アンケートやヒアリング…
国の政策の流れのフォローやデータの統計分析、経済地理学の本らしく地図化などが丁寧に行われている。 ただし、昔の産業立地論と異なり、本書が扱っているテーマは、イノベーションとか研究開発といった目に見えないことが本質にある分野なので、隔靴掻痒の…
久繁さんは今回もこれまで同様公務員に手厳しい。耳が痛いというか、時に不快感を覚えつつも一気に読んでしまうのは、「身銭を切らない公務員」など、指摘の一つ一つが具体的で説得力があるからだろう。 本書で展開される行政批判、商店主批判、地域活性化策…
1 この本に書いていることの7割は賛成だ。 ・発達した鉄道網は日本の大都市圏の大きな強みだ。 ・「国土の均衡ある発展」政策に基づく地方への予算配分は大都市の勤労世帯の生活水準を引きずりおろした。公共事業財源は大都市の保育所やデイケア、通勤地獄…
この本のメインテーマは本題の「自治体連携と受援力」だが、あえて副題の「国に依存できない」に注目して該当箇所を拾い出してみた。 1.応援職員の派遣について、自治体相互の応援の他に国(総務省)や全国知事会を通じたスキームもあり、被災自治体の力に…
著者は当時内閣府防災担当の総括参事官。3月11日発災からしばらく官邸に常駐し緊急災害対策本部の運営を担当。 第2章「初動対応はいかになされたか」では、官邸・緊対本部の12日間の動きに関し、平成23年版防災白書に短く淡々と記述されていたことに…
富士山の地学観察ガイドブックであると同時に、富士山噴火災害史の解説にもなっている岩波新書の一冊。おもしろい。 富士山が起こす極めつけの破壊現象は、山体崩壊とそれに伴う土石流。5000年に1度程度起こるが、ハザードマップでも想定外。2900年…
橋のしくみ、種類、建設手法、維持管理について、平易に解説した本。 講談社ブルーバックスを手にとると、はるか昔の高校生時代を思い出す。 この本で知った橋のトリビアいくつか ・アーチ橋は懸垂曲線をさかさまにした形が最も適している。葉書きの橋に10円…
タイトルはまちづくりだが、chapter5の6つの事例紹介も、chapter6の変革のための7つのステップも、ビル単位ないし広場単位のプロジェクトだ。行政がつくる中心市街地活性化計画などと比べると、面積的には千分の1か1万分の1のスケールだろう。 本書の主張…
タイトルだけ見て図書館から借りてきた本。「琉球文化全般の最高のフィールドワーカー」である鎌倉芳太郎の生涯をたどったノンフィクションだった。 今、沖縄観光のハイライトである首里城は、もちろん沖縄戦で完璧に破壊され、本土復帰後国直轄の国営公園事…
交通経済学者である竹内教授が書いたこの本には、世間の人の経済談義には誤解や矛盾が多い(例えば「効率性追求は弱者切り捨てや環境破壊につながる」、「交通は公共性がある」)ことは説明してくれている。 しかし、それに代わる回答は用意されていない場合…
徳島県海部町(今は合併して海陽町の一部)。県南の海辺にあるこの小さな町は自殺率が離島を除き全国最低水準。 その理由をインタビューやアンケート、さらには統計解析まで駆使して解明した本。 この町の特徴は、1.狭い地区に住宅が密集し、住民同士の接…
前半現在篇のまとめ(P83)によると①イオンモールなどが並ぶ郊外は地方の若者の満足度を高め、地方都市はちょうど良い理想的な生活の場である。②モータリゼーションは地方の煩わしい人間関係を排除し地方都市の魅力を高めている。③彼らは友人関係や家族関係…
著者は神戸の震災当時、神戸市役所港湾局管理課長だった人。 震災前から神戸港の地位は低下傾向。貨物取扱量の国内シェアはかつての40数%から大きく下がって10数%となっていた。原因は、生産拠点のアジアへの移転、アジア各国の港湾整備によるトランジット…
東日本大震災により東北3県以外で最も多くの死者・行方不明者を出した市町村は千葉県北東部、九十九里浜に面した旭市であった。 本書の著者は近隣在住で長らく高校の地学教師を勤めた人。3.11の後、3月14日から約40日間、旭市飯岡地域と銚子地域をバイクと…
第1章 東日本大震災は「未曾有」と言われるが、被災者の数でみると阪神・淡路大震災の方が大きい。 先進国の復興モデルは、ゆっくり、丁寧に進めること。 第2章 復興計画の役割は①復興後のまちの全体像を示すことと、②復興状況のモニタリングの指針となるこ…
400ページを超える大著をめくりながら、京阪神大都市圏の特徴、特に東京大都市圏との違いを探してみた。 1.京阪神大都市圏は三極構造で、東京大都市圏の東京都心一極構造とは対照的。 →これは昔からの常識。 2.外郊外(湖南、学研都市、三田、泉南など)…
自ら自転車で5年間世界を放浪していた著者が、大学院で人類学を学び、フィールドワークとしてタイやネパールで日本人バックパッカーから聞き取りをするなどしてまとめた書。 バックパッカーには移動型、沈潜型、移住型、生活型の4タイプ。 日本人バックパッ…
序章 大都市制度を全国経済の牽引力と関連づける記述あり。 ⇒日本の大都市制度=政令指定都市は、単に大都市に「道府県のおおよそ7割から8割の権限」を認めただけに過ぎないのだから、その効果は基本的に道府県内で完結している。全国経済と何の関係があるん…
災害エスノグラフィーとは、文化人類学の方法の一つであるエスノグラフィー(民族誌)を用い、災害の現場に居合わせた人たちの言葉を聞き、彼らが何に悩み、苦労し、どのようにそうした問題を解決していったかという一連のプロセスを明らかにしようとするも…
<重要と思った記述> 日本人は世界で最もリスク回避的な国民ですが、皮肉なことに、人的資本と金融資本のポートフォリオで見れば、ほとんどの日本人がリスクを極大化した人生設計をしています。(p208) ? 私は、国家は原則として市場に介入すべきではない…