2009-01-01から1年間の記事一覧
編著者の三浦展氏は前著で、日本中の地方都市のロードサイドに大型商業施設が立地し、本来固有の歴史と風土を持っていた地方の風土が全国一律の均質化なものになってしまった「国土の郊外化」のことを、「ファスト風土」と名づけて批判した。ネーミングだけ…
あとがきを見て著者が今年75歳のお年であることに驚く。64歳からオランダに留学して修士課程、帰国し神戸大学で博士課程を終えた後、70歳を過ぎて再度留学し、この本をまとめた。著者は大阪府職員として千里や泉北のニュータウン開発に従事した都市計画の実…
三浦半島にある面積72haの小さな、しかし源流から海までほぼ完璧な流域、小網代の谷が首都圏の近郊緑地保全区域の指定を受けた。本書は、小網代の保全や鶴見川の流域活動の中心人物である岸先生と養老先生の、小網代探検記と対談だ。 第一次首都圏整備計画(…
「美しい日本の自然」、「自然との共生」といった語句は、マスメディアにも政府の白書や計画にもやたら登場し、かえって何のインスピレーションも呼び起こさない空虚な言葉となってしまった。世界遺産ブームやビジット・ジャパンは、限られた場所だけに人々…
1.農山村の空洞化とその新たな局面 1960年代に造語された「過疎」は人の空洞化を、80年代に生まれた「中山間地域」は土地の空洞化を表し、90年代に生まれた「限界集落」はむらの空洞化の延長線上に発生している。さらに、人々の地域に対する「誇りの空洞化」…
1.街選びで将来の暮らしが決まる 「将来の資産価値を考えると、伸びしろのある街を選ぶべき。高層マンション街区のような今以上に変わる余地に欠ける街や、木造密集地域のように伸びしろを生かしにくい街ではなく、少し前の中目黒のようにまとまった区画の工…
東南アジアを中心に、北米やオーストラリアも含め、軌道系都市交通の現状を説明するとともに、経営上の課題や設備の維持管理上の問題点を分析し、軌道系都市交通を有効に機能させるためのポイントをまとめている。 著者は「根っからの鉄道ファン」とのことだ…
デービス(カリフォルニア州) デービス市は、カリフォルニア大学デービス校のある人口64,000人の小都市である。デービス市は総合計画で「ゆっくりと成長する」「中心市街地は歩行者優先とする」ことを明示し、都市計画はオリジナリティにあふれ、かつ斬新で…
財政破綻した北海道夕張市のルポのほか、最近財政危機に陥った大阪府泉佐野市、長野県王滝村、福島県泉崎村、兵庫県篠山市などの財政悪化の要因を報告。炭鉱閉山の夕張以外の自治体は、特別に不利な条件にあったわけではないように私には思われるが、いずれ…
つい30年ほど前まで、九十九里浜には人工的な構造物がほとんどなく、砂浜だけが広がっていたと記憶している。しかし、現在の九十九里浜は、護岸、ブロック、ヘッドランド、離岸堤など、コンクリートの構造物で覆われている。 本書は、懐かしいかつての砂浜と…
期待して読んだのだが、・・・ これまでの著作のような客観的な分析があまりなく、地方分散派の願望を述べた本になってしまっている。 そして、ツッコミを入れたくなる箇所が多い。 例えば、第1章で、明治から戦前にかけては「地方から流出した労働力が幅広…
1年前に出版された本。 リチャード・フロリダ、マイケル・ポーター、トーマス・フリードマン、大前研一などの意見を日本の地域政策に投影するとこういう本になるのだろう。 地球規模での地域間競争の時代が到来した今日、都道府県の壁を超えて広域的な地域…
赤い装丁の中国本は、センセーショナルな中国脅威論かその反対の崩壊論が多いが、この本はそうではない。マイクロソフトがどのように中国の超一流の頭脳を集め、その才能を開花させていったかを、生き生きと描いている。 「優秀な人間を雇う決め手は給与だろ…
第1章 虚構のような街多摩NTベルコリーヌ南大沢に代表される新しいタイプのニュータウンには、現実から浮いた感じの虚構性がある。都市空間のディズニーランド化が住宅地にまで浸透。第2章 この立場なき場所 金属バットから酒鬼薔薇まで 建築じゃない住宅第3…
現場主義の経済学者関先生の本は、毎度のことながら、明るく、読者を元気にさせてくれる。しかし描かれている内容は深刻だ。 本書の前半は広州など中国の現地企業や進出した日本の中小企業のルポ。そのスピード、規模の大きさとダイナミックさには驚かされる…
中心市街地に関する本は最近多数出版されているが、本書は、英国の失敗と成功の経験と、日本の5つの事例(長野、日向、青森、宮崎、柏)を、商業まちづくりを専門とする3人の著者の視点から詳述しているところに特徴がある。 80年代のサッチャー政権下の規制…
日本の航空産業は、戦略的産業観が欠如し、金融業と同じく市場経済のスピードを見誤った。 ?首都圏の空は、国際線を成田、国内線を羽田と分離したために、ネットワーク機能を損なっている。 ?成田、羽田の発着枠拡大や、関空、中部の余裕を踏まえ、日本もオ…
「成功方程式」というインパクトのあるタイトルに、すぐ効くよく効く処方箋を期待してしまったが、そんな安直な本ではなかった。 中心市街地本には都市計画的アプローチと商業・流通的アプローチがあるが、本書は後者に属する。 本書は、市街地の公共性を問…
著者は公共経済学を専門とする著名な経済学者であるが、「市場原理主義」と言われがちな一般の経済学者とは違い、国土審議会の主要メンバーも務めるなど政策形成に参画し、また地方の実情を自らの目でよく見ている。本書の見解は、現実を踏まえたバランスの…
バブル崩壊以後長期にわたって低迷した日本の不動産市場は、金融商品化(証券化)を通じて外資マネーの呼び込みに成功したことにより復活し、都心などではミニバブルと呼ばれる現象まで起きた。 しかし、不動産の金融商品化には落とし穴があった。ひとつは銀…
第2章 中産階層の台頭と民主化からの逃避 中国崩壊論は崩壊した。中国崩壊論は、天安門事件や旧ソ連・東欧の社会主義崩壊といった状況下で展開された。しかし、実際には旧ソ連・東欧諸国の激変は中国の民主化の反面教師的な役割を演じ、中国共産党への求心力…